フェルマーの最終定理(文庫版)

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

最近の通勤本でした。この所寝ても醒めても仕事のことばかり考えていたけれど、通勤時間(といっても往復30分だけど)だけは譲らなかった&唯一の楽しみだったのはこの本のおかげ。
今やこの手の本では有名なサイモン・シンが、その名を世に広めるきっかけになったのがこの本だそうなんだけど、なるほどたしかに素晴らしいと言うしかない名著。文庫版が出たのをきっかけに買ってみたけど読んで本当に良かった。毎日続きが気になって仕方がなかった。読んでいてこんなにワクワクしてしまったのは、自分が俗に言う“理系”であるからだけではないはず。サイモン・シンの書き手としての非凡さにはただただ脱帽な一冊。帽子は被ってないけどな。
んでこの本は(タイトルにもなっている)問題を提起したフェルマー、そしてそれを証明したワイルズはもちろんのこと、それに関わるその他の多くの数学者達についての記述も読み応えがあり、それだけでも読む価値があると思う。個人的には若き天才ガロアに強く惹かれた。名前は聞いたことあったけどね、すごい人だったんだなぁと。
もー書いているとキリがないので感想はここら辺にして、個人的に強く共感した部分をメモ。以下、本文よりワイルズの言葉を引用。

「大事なのは、どれだけ考え抜けるかです。考えをはっきりさせようと紙に書く人もいますが、それは必ずしも必要ではありません。とくに、袋小路に入り込んでしまったり、未解決の問題にぶつかったりしたときには、定石になったような考え方は何の役にも立たないのです。新しいアイディアにたどりつくためには、長時間とてつもない集中力で問題に向かわなければならない。その問題以外のことを考えてはいけない。ただそれだけを考えるのです。それから集中を解く。すると、ふっとリラックスした瞬間が訪れます。そのとき潜在意識が働いて、新しい洞察が得られるのです。」(p323 より)

そうそう、そうだよなぁと、思わず電車の中でため息をついてしまった。やっぱりそうだったんだと。何となくそうなんじゃないかと思っていたことが、そう思うのは自分だけじゃなかったとわかってとても安心した。言われればあたりまえのように思えるけれども、これは確信を持っていないとなかなか出来ないこと。いや、もちろん「得られる洞察」の程度に激しく差があるわけですが;-)
ここで書評する本にしては珍しく、貸出し予約が入っていたりします。文庫版なら漱石…じゃなかった英世1枚でおつりがくるぐらいなので、買って損はないかと。とにかくオススメです。薦めたって何一つ得しないオレが言ってるんだから間違いない。